HARP様導入事例
将来的なサービス基盤拡張も視野に入れ、最新LTS「Zabbix 5.0」を採用したHARP 「かゆいところは確実に修正」が長期利用のポイント
将来的なサービス基盤拡張も視野に入れ、最新LTS「Zabbix 5.0」を採用したHARP 「かゆいところは確実に修正」が長期利用のポイント
サービスの基盤を1つにまとめることに伴い、監視基盤も1つにまとめて一元的な監視を実現し、運用負荷を減らしたい
コストの削減
幅広いOS、ネットワーク機器の監視
変化し続ける顧客ニーズ、監視対象、リソースの拡張に対応できる監視ソリューション
監視対象のプラットフォームが多様
全機能フリーで利用できる、 機能改善が利用者のニーズをよく反映している
活発なコミュニティ
各種提供サービスの監視運用レベルが揃った
監視システムの選定・導入作業の省略ができるようになった
「IT基盤の共同利用」を掲げ、電子申請サービスや施設予約サービスを はじめ、北海道および道内の地方自治体向けにASP/SaaSサービスを提 供してきたHARPでは、約10年にわたってZabbixを活用し、さらに最 新LTSバージョンであるZabbix 5.0に移行した。自治体業務におけるデ ジタル技術の役割が高まる中、より拡張性に優れた監視基盤の実現に通 り組んでいる。
クラウド時代を先取りし、自治体向けにサービスを提供するHARP
2004年、北海道が電子自治体の取り組みを推進するために掲げた「HARP構想」に基づき、第三セクターの形で設立された株式会社HARP(以下「HARP」)は、クラウドサービスが市民権を得る前から「IT基盤の共同利用」を掲げ、北海道をはじめ、全国の自治体向けに、「LGWAN」(総合行政ネットワーク)と連携した自治体クラウドサービスの設計、構築、運用を担ってきた。
同社プロジェクト推進部IT基盤グループの外崎 幸大氏は「 われわれは地方税ポータルシステムの『eLTAX』の手続きを行うシステムなども提供しており、住民の方々が各種サービスを利用できなくなるような事態が起きないよう配慮しながらサービスを提供しています 」と述べる。
基盤の統合に伴い、幅広い対象を監視できOSSのZabbixを採用
HARPでは当初、サービスごとに個別に基盤を構築していた。当然ながら、その監視システムも運用する担当者も別々だったという。
「当初はサービスの数も少なく、人が毎朝監視画面を目視で確認し、問題があったら対応するような形で運用していました。しかしサービスが徐々に増えてきたことから基盤を一つにまとめることになりました」(外崎氏)。これにともなって監視基盤も一つにまとめて一元的な監視を実現し、運用負荷を減らそうと考えたという。
それ以前はいくつかの商用監視ツールのほか、MRTGやCactiといったオープンソースソフトウェア(OSS)のツールをそれぞれの担当者の判断で導入していた。しかし、IaaSからSaaSに至る複数のサービス提供レイヤーをカバーし、同時に複数展開しているサービスを横串で包括的に監視することを考えたとき、OSSでコストを削減できる上、幅広い機器を監視できるZabbixが有力な選択肢となった。
「当時、エージェントを導入しなくてもLinuxやWindows、UNIX系など幅広いOSにまたがってサーバを監視でき、さらにネットワーク機器も監視できるツールは、Zabbix以外にほとんどなかったと思います」(外崎氏)
個人的にZabbixに触れ、試していたという外崎氏にとっては、「コミュニティ活動が非常に活発だったこともポイントでした。おかげで当初は、有償のサポートサービスに入らなくても、Webやコミュニティから得られる情報だけで容易に導入することができました」という。
拡張し続けるサービス、今後を見据えてZabbix 5.0に移行
こうしてHARPは2010年、複数のサービスの基盤を1つに統合するとともに、Zabbix 2.0を採用してサービスの監視を一元化した。
OSSを採用することでライセンスなどの費用を抑えつつ、特定のベンダーにロックインされない仕組みを作り上げ、地方自治体のシステムに求められる公共性を担保することができた。また、以前は、一方に内製ツールで見ているサービスがあれば、もう一方には監視サービスとセットで導入した商用監視ツールがあるといった具合に監視サービスレベルにばらつきが生じていたが、それも解消できた。何より、実際に運用に当たる外崎氏ら自身にとって使いやすいソフトウェアを選べたのが一番だった。
ただ、システムは生き物だ。そのころから仮想化技術が普及し始め、顧客の要望に応じてさらにサービスが広がってきた。「どんどんサービスが増え、管理対象となる仮想マシン等が増えてくるにつれ、当初のリソース設計ではキャパシティの上限に達することが見えてきました。また、運用設計においてもサービス毎の障害状況の可視化やパブリッククラウド監視実装等にも課題があったこともあり、新しいバージョンで監視基盤を作り直すことに決めました」(外崎氏)
HARPでは徐々にZabbixをバージョンアップしていたが、パフォーマンスのチューニングや今後のリソース拡張を考えると、以前のZabbixが採用していたMySQLよりもPostgreSQL のTimescale DBの方が有効ではないかと考え、2020年12月にはデータベースにTimescale DBを採用したZabbix 5.0に移行し、新監視システムの運用を開始した。また、監視データが大量に溜まってくると削除処理に時間を要してしまう問題の改善にも期待したという 。
新監視システムはZabbixサーバー2台、Zabbixプロキシ10台の構成で、約1000の監視対象を監視している。監視トリガーは約7000項目、アイテム数は約3万に上るというが、「実はけっこう監視の見直しをかけており、以前に比べ監視の規模は3分の2程度にシュリンクしています」と外崎氏は述べた。
「以前はあまり適切なフィルタをかけず、本質的ではない項目も含めていろいろなものを自動収集していましたが、それを見直しました。合わせて、今後サービスが拡張していった場合でも問題なく処理を捌けるようサイジングを行い、性能的に現行の約10倍まで規模が拡大してもパフォーマンスを維持できることを評価した上で作り直しています」(外崎氏)
「かゆいところを確実に直してくれる」ことが長期にわたる利用のポイント
Zabbix 5.0の移行に当たってHARPはZabbix Enterpriseサポートも導入した。「スモールスタートで始める分にはコミュニティの情報を参照しながら進めることができますが、規模が大きくなってくると、細かく運用を詰めるにしても、自力ではどうしても分からない部分が出てきてしまいます」(外崎氏)。逆に、それだけ事業が成長して規模が拡大しているならば、適切なオペレーションを構築するという意味でも、専門的なノウハウに投資するという選択肢は十分あり得るとした。
10年以上のZabbixとの付き合い、5.0へのバージョンアップを経て、外崎氏はZabbixの利点を「運用者にとってかゆいところ、困っているところを確実に直してくれること」だと振り返った。
「Zabbix 5.0で搭載されたタグ機能一つとってもそうですが、バージョンアップのたびにきめ細かく機能追加や改善が行われています。最初は使いづらいなと思っていても、ちょっと我慢していると直してくれる、そこがありがたいなと思っています」(外崎氏)。それが長くZabbixを使い続けられる理由の1つだとした。
HARPでは、自身のプラットフォーム上で提供しているサービスの監視にZabbixを活用するとともに、自治体側の環境にZabbixプロキシを設置し、そこで稼働するシステムやサービスの監視を肩代わりする運用監視サービスの提供も検討し、自治体側の運用負荷の軽減に取り組む考えだ。
また、サイバー攻撃の深刻化を踏まえ、総務省が自治体に求めるセキュリティ水準も高まっていることから「Zabbixにセキュリティ監視も統合し、セキュリティガイドラインが求める設定ができているか、不審なサービスが起動していないかなどをチェックし、把握できるようになれば、お客様のニーズにさらに応えられるのではないかと考えています」(外崎氏)とした。
新型コロナウイルスの影響もあり、自治体業務のさらなる電子化、デジタル化が進む中、Zabbixを生かして安定したサービスを提供し続けていく。
株式会社HARPは、電子自治体の推進を目的として2004年に設立された自治体クラウドサービスを専門とする第三セクターです。
自社開発の自治体向けクラウドサービスの提供を行うとともに、LGWAN-ASPを始め、自治体向けクラウド基盤の設計・構築・運用を数多く行ってきており、自治体クラウドに関する全てのレイヤーを網羅したサービスを提供します。
これまで自治体向けクラウド基盤の運用で培ってきた監視システム構築運用のノウハウ・実績を基に、Zabbixを利用した監視システムの技術支援サービスの提供を進めてまいります。
マーケティングチームまでお気軽に お問い合わせ ください。